歌うことができる<高佐廻り地名記>
高佐廻り地名記
                                                          吉田向学校訂 2010・2・12
                                                          大田剛志指導 2010・3・2
(注1)蔵田家文書にある表紙奥書きを入れて半紙22枚に達筆で書かれたもの、吉部の賦の三倍はある長編で嘉永7年(1854)73翁吉岡順平祐永の作で、その4年後の安政五年の春、蔵田安治郎がこれを写したことになっている。地名と史実を織りこんだもので、高位の歴史はこの地名記にすべて盛りこまれているといってよいほどの力作である(『むつみ村史』)。
(注2)下記の高佐廻り地名記は、吉田向学によって校訂されたものです。7・5調の4行詩に組み替え、鉄道唱歌のメロディーで歌うことができるようにしたものです。校訂の際に、『むつみ村史』の高佐廻り地名記の中から削除された、被差別部落の歴史と伝承にかかわる部分を『ふるさとの歌』に初出の高佐廻り地名記を参考に復元しました。この歌の歴史的背景と意義については別稿とします。
(注3)3月1日と2日、期せずして<高佐郷>在住の元高校教師で郷土史研究家の大田剛志先生ご夫妻と出会い、『高佐廻り地名記』の原文(古文書)のコピーをいただき、筆者の<歌うことができる高佐廻り地名記>について校正していただきました。原文、大田剛志先生ご夫妻の校訂、高佐村の住民の方とのふれあいで得た情報をもとに以下の通り訂正しました。
| 高佐廻り地名記 | 読み | 
| 抑 | |
| 1 | |
| 山廻村始めとし | やままわりむら はじめとし | 
| 陣願山の境内は | じんがんやまの けいだいは | 
| 昔の小名は城構 | むかしのおなは しろがまえ | 
| 麓に大休堀の川 | ふもとにたいきゅう ほりのかわ | 
| 2 | |
| 岡は武稽古馬場広き | おかはぶけいこ ばばひろき | 
| 古事書留めて記録谷 | こじかきとめて きろくだに | 
| 境に三ケ所峠越えて | さかいにさんかしょ たおこえて | 
| 敷草野山・井屋ケ迫 | しきくさのやま いやがさこ | 
| 3 | |
| 谷尻久箱宝林と | たにじりくばこ ほうりんと | 
| 過ぎて境内福寿山 | すぎてけいだい ふくじゅさん | 
| 高佐を守る氏神社 | たかさをまもる うじがみしゃ | 
| 八幡様ぞましまする | はちまんさまぞ ましまする | 
| 4 | |
| 古木の松に杉桧 | こぼくのまつに すぎひのき | 
| 若宮御社に引並び | わかみやおんしゃに ひきならび | 
| 龍神様ぞましまする | りゅうじんさまぞ ましまする | 
| 牛馬の守りありがたや | ぎゅうばのまもり ありがたや | 
| 5 | |
| 広き氏子に大宮司 | ひろきうじこに だいぐうじ | 
| 後は子の日植松に | うしろはねのひ うえまつに | 
| 前は荒人・色気谷 | まえはこうじん いろけだに | 
| 若狭盛りの境内は | わかさざかりの けいだいは | 
| 6 | |
| 竹木は茂き森ケ台 | たけぎはしげき もりがだい | 
| 切畑川の水流れ | きりはたがわの みずながれ | 
| 宮の馬場より詠むれば | みやのばばより ながむれば | 
| 東は高き観音地 | ひがしはたかき かんのんぢ | 
| 7 | |
| 妙性院の大寺あり | みょうしょういんの だいじあり | 
| 寺内広き開作地 | てらうちひろき かいさくち | 
| 当寺十二世発明の | とうじじゅうにせい はつめいの | 
| 慈限和尚の仕置にて | じげんおしょうの しおきにて | 
| 8 | |
| 淀の写しの水車 | よどのうつしの みずぐるま | 
| 鳴滝村の境内は | なるたきむらの けいだいは | 
| 半田・正亀・滝の平 | はんだしょうがめ たきのひら | 
| 勝負ケ迫や小助峠 | しょうぶがさこや こすげたお | 
| 9 | |
| 穴観音の奥深き | あなかんのんの おくふかき | 
| 前の芝より詠れば | まえのしばより ながむれば | 
| 中に大川・往還筋 | なかにおおかわ おうかんすじ | 
| 宿の人馬も賑はしや | やどのじんばも にぎわしや | 
| 10 | |
| 脇に行者の貴法院 | わきにぎょうじゃの きほういん | 
| 不動明王・愛宕様 | ふどうみょうおう あたごさま | 
| 螺貝・錫杖音高き | ほらがいしゃくじょう おとたかき | 
| 竜王山の麓には | りゅうおうざんの ふもとには | 
| 11 | |
| 少し岡は垣之内 | すくなしおかは かきのうち | 
| 山部は穢す皮張場 | やまべはけがす かわはりば | 
| 長吏の役は高佐郷 | ちょうりのやくは たかさごう | 
| 何そ非常のあるときは | なんぞひじょうの あるときは | 
| 12 | |
| ひしぎ・早縄・腰道具 | ひしぎはやなわ こしどうぐ | 
| 六尺二歩の棒構ひ | ろくしゃくにぶの ぼうかまい | 
| 旅人強盗制道し | たびびとごうとう せいとうし | 
| 高佐郷中貫取 | たかさごうちゅう つなぎとり | 
| 13 | |
| 前は郷家の店酒屋 | まえはごうかの みせざかや | 
| 諸事の買物閊なし | しょじのかいもの つかえなし | 
| 懸木・てね木の売旦那 | かけぎてねぎの うりだんな | 
| 上は三安座頭坊 | かみはさんやす ざとうぼう | 
| 14 | |
| 匹季の神徳引くときは | しきのしんとく ひくときは | 
| 錫杖・琵琶の手面白や | しゃくじょうびわのて おもしろや | 
| 百八煩悩数珠とりて | ひゃくやつぼんのう じゅずとりて | 
| 土民御祈躊・地神経 | どみんごきとう じしんきょう | 
| 15 | |
| 門前・須通り・中尾村 | もんですどおり なかおむら | 
| 向こうに見えし安附の | むこうにみえし あんづけの | 
| 元結山の麓川 | もったいやまの ふもとがわ | 
| 久保や神田を打過ぎて | くぼやかんだを うちすぎて | 
| 16 | |
| 岸高村の高面所 | きしたかむらの たかめんじょ | 
| 上は白砂・両家村 | かみはしらすな りょうけむら | 
| 薄地の田地石安き | うすじのでんち こくやすき | 
| 鐘地ケ峠より詠れば | かねちがたおより ながむれば | 
| 17 | |
| 東向こうの大歳は | ひがしむこうの おおとしは | 
| 大歳神と大晦日 | おおとしがみと おおみそか | 
| 宮ケ浴をば左に見 | みやがえきをば ひだりにみ | 
| 有の木迫や大丸子 | ありのきさこや おおまるこ | 
| 18 | |
| 大伝村や大迫の | だいでんむらや おおさこの | 
| 浴谷深き下谷の | えきたにふかき しもたにの | 
| 湧き出る清水・済ケ迫 | わきでるしみず すみがさこ | 
| 水の流れの両平は | みずのながれの りょうひらは | 
| 19 | |
| 大地ヶ浴や寺ケ浴 | おおぢがえきや てらがえき | 
| 船地ケ迫の分れ道 | ふなちがさこの わかれみち | 
| 北は小村の歳の森 | きたはこむらの としのもり | 
| 祝い小餅に飛びかざり | いわいこもちに とびかざり | 
| 20 | |
| 水の流れの川上は | みずのながれの かわかみは | 
| 諸国御法度・博打岩 | しょこくごはっと ばくちいわ | 
| 藁で囲んで昔から | わらでかこんで むかしから | 
| 非人と食の歳の宿 | ひにんとじきの としのやど | 
| 21 | |
| 岡は片亦大境 | おかはかたまた おおざかい | 
| 日々に儲けの日用原 | ひびにもうけの ひようばら | 
| 西は高佐の羽月村 | にしはたかさの はづきむら | 
| 馬の名物昔から | うまのめいぶつ むかしから | 
| 22 | |
| 横和の松の境内は | よこわのまつの けいだいは | 
| 千本松と名も高き | せんぼんまつと なもたかき | 
| 森地の田地・開作地 | もりちのでんち かいさくち | 
| 北は福田の大境 | きたはふくだの おおざかい | 
| 23 | |
| 道祖ケ峠と申すなり | どうそがたおと もうすなり | 
| 往還下れば猫亦の | おうおかんくだれば ねこまたの | 
| 岡は恐ろしいぎの平 | おかはおそろし いぎのひら | 
| 日も晩景の暮石は | ひもばんけいの くれいしは | 
| 24 | |
| 身廻り谷の淋しさよ | みもおりたにの さびしさよ | 
| 昔狸の化け物や | むかしたぬきの ばけものや | 
| 産女の出たる咄あり | うぶめのでたる はなしあり | 
| 岡の広きは上野台 | おかのひろきは うえのだい | 
| 25 | |
| 茅やあえらの草深き | かややあえらの くさふかき | 
| 近辺諸村の草刈場 | きんぺんしょそんの くさかりば | 
| 前のひろきは道祖ケ原 | まえのひろきは どうそがはら | 
| 夜深に通る人々は | よふけにとおる ひとびとは | 
| 26 | |
| 古狼・狐の声を聞く | おおかみきつねの こえをきく | 
| 西の麓は横貝と | にしのふもとは よこがいと | 
| 高佐七つの清水川 | たかさななつの しみずがわ | 
| 来光山の高大寺 | らいこうざんの こうだいじ | 
| 27 | |
| 諸国当国御札所 | しょこくとうこく ふだどころ | 
| 月賞拝す観世音 | がっしょうはいす かんぜおん | 
| 高山登る道筋は | たかやまのぼる みちすじは | 
| 午王の森や塔の森 | ごおうのもりや どうのもり | 
| 28 | |
| 岡は大社の宮ぞあり | おかはたいしゃの みやぞあり | 
| 日熊権現ましまする | ひのくまごんげんましまする | 
| 社内も広き大宮司 | しゃないもひろき だいぐうじ | 
| 竹木は茂き御立山 | たけぎはしげき おたてやま | 
| 29 | |
| 後は広き宇生賀村 | うしろはひろき うぶかむら | 
| 前は地吉の畠あり | まえはじよしの はたけあり | 
| 箕面平と申すなり | みもおりだいらと もうすなり | 
| 山根や持や坂本の | やまねやもちや さかもとの | 
| 30 | |
| 百性方の立来よし | ひゃくしょうかたの たつきよし | 
| 腕をさすりて我勝てに | うでをさすりて われがてに | 
| 水の流れは妙ケ崎 | みずのながれは みょうがさき | 
| 西の麓は金拳 | にしのふもとは かなこぶし | 
| 31 | |
| 寺ケ浴には行者あり | てらがえきには ぎょうしゃあり | 
| 不動明王信心に | ふどうみょうおう しんじんに | 
| 螺貝・錫杖賑はしや | ほらがいしゃくじょう にぎわしや | 
| 養寿院とは申すなり | ようじゅいんとは もうすなり | 
| 32 | |
| 所帯吉野の庭の花 | しょたいよしのの にわのはな | 
| 後の谷に草穴の | うしろのたににくさあなの | 
| 奥の深きはわらんべう | おくのふかきは わらんべう | 
| 下は中山小村でも | しもはなかやま こむらでも | 
| 33 | |
| 高佐由緒のある村で | たかさゆいしょの あるむらで | 
| 八幡宮の祭礼に | はちまんぐうの さいれいに | 
| 御能写の道具あり | おのううつしの どうぐあり | 
| 獅子・羯鼓や笛・太鼓 | ししかっこうや ふえたいこ | 
| 34 | |
| 笙・篳篥の鳴物で | しょうしちりきの なりもので | 
| 車の上の百芸は | くるまのうえの ひゃくげいは | 
| 中山村の家伝なり | なかやまむらの かでんなり | 
| 車錺るは畑の村 | くるまかざるは はたのむら | 
| 35 | |
| 楽に揃うて行水で | らくにそろうて ゆくみずで | 
| 信心社内にひき附る | しんじんしゃないに ひきつける | 
| 付と賑ふ獅子の舞 | つけとにぎわう ししのまい | 
| 中山村の水流れ | なかやまむらの みずながれ | 
| 36 | |
| 大坪なのる地名あり | おおつぼなのる ちめいあり | 
| 首塚や灰塚や | なまくびつかや はいづかや | 
| 正守長者の古跡あり | まさもりちょうじゃの こせきあり | 
| 金銀留めてある咄 | きんぎんためて あるはなし | 
| 37 | |
| 見ざる知らざる土の底 | みざるしらざる つちのそこ | 
| 昔咲いたる花のあと | むかしさいたる はなのあと | 
| 法恩・白砂・薄地なり | ほうおんしらすな うすじなり | 
| 少し下れば坪の内 | すこしくだれば つぼのうち | 
| 38 | |
| ふいつく山を向こうに見 | ふいつくやまを むこうにみ | 
| 松尾まがりの真中に | まつおまがりの まんなかに | 
| 後井村の境内は | うしろいむらの けいだいは | 
| 鶴生山の三岳寺 | かくしょうざんの さんがくじ | 
| 39 | |
| 弁才天様ましまする | べんさいてんさま ましまする | 
| 七観音も御寺に | しちかんのんも おんてらに | 
| 月賞・柏手絶へもなし | がっしょうかしわで たえもなし | 
| 神仏信心詣ふであり | しんぶつしんじん もうであり | 
| 40 | |
| ぼんすい山の後には | ぼんすいやまの うしろには | 
| 深きれん淵・水流れ | ふかきれんぶち みずながれ | 
| 雑穀作る畠の中 | ざっこくつくる はたのなか | 
| 原に古跡は正八幡 | はらにこせきは しょうはちまん | 
| 41 | |
| 昔由緒のある宮で | むかしゆいしょの あるみやで | 
| 解除ならぬ古所の宮 | かいじょならぬ こしょのみや | 
| 詣ふでも気おふ鈴の音 | もうでもきおう すずのおと | 
| 柏手絶えぬ五社参り | かしわでたえぬ ごしゃまいり | 
| 42 | |
| 少し岡は水ケ峠 | すくなしおかは みずがたお | 
| 不動の堂より詠れば | ふどうのどうより ながむれば | 
| 嘉永六から相生の | かえいむつから あいおいの | 
| 松の噂も高佐ごや | まつのうわさも たかさごや | 
| 43 | |
| 南はたかき伏馬山 | みなみはたかき ふしまやま | 
| 後は広き吉部の平 | うしろはひろき きべのひら | 
| 前は山畠・小松原 | まえはやまはた こまつばら | 
| 高佐五ケ村草苅場 | たかさごかそん くさかりば | 
| 44 | |
| 北は小村の高の峰 | きたはこむらの こうのみね | 
| 竹沢山や村の財 | たけたくさんのむらのざい | 
| 修甫山近く重宝の | すおやまちかく ちょうほうの | 
| 漆ケ久保や宮面の | うるしがくぼや みやつらの | 
| 45 | |
| 少し岡は塔の本 | すくなしおかは どうのもと | 
| 弥生に四方の花見峠 | やよいによもの はなみたお | 
| 前尻村の境内は | まえじりむらの けいだいは | 
| 石神森の大清水 | いしがみもりの おおしみず | 
| 46 | |
| 湧き出る水も村の財 | わきでるみずも むらのざい | 
| 森地の田地高面処 | もりちのでんち たかめんじょ | 
| 岡は往還通り筋 | おかはおうかん とおりすじ | 
| 少し下れば段午房 | すこしくだれば だんごぼう | 
| 47 | |
| 萩山口の分れ道 | はぎやまぐちの わかれみち | 
| 長き世を得る鶴巻の | ながきよをうる つるまきの | 
| 運ぶ連者の足出原 | はこぶれんじゃの あしでばら | 
| 寒暑を除る景の邑 | かんしょをさぎる かげのむら | 
| 48 | |
| 万年山の高徳寺 | まんねんやまの こうとくじ | 
| 七堂伽藍の大寺も | しちどうがらんの おおでらも | 
| 大仏・地蔵に般若経 | だいぶつじぞうに はんにゃきょう | 
| 先住和尚の仕置なり | せんじゅうおしょうの しおきなり | 
| 49 | |
| 前の家蔵岸高き | まえのいえくら きしたかき | 
| 向ふに廣き馬一ツ | むこうにひろき うまひとつ | 
| 低い東の麓には | ひくいひがしの ふもとには | 
| 往世も絶へぬ川瀬の音 | いくよもたえぬ かわせのね | 
| 50 | |
| 水の流れは正木川 | みずのながれの まさきがわ | 
| 白崎吉部の大境 | しらさききべの おおざかい | 
| 今白崎は賑わしや | いましらさきは にぎわしや | 
| 上の大炮御稽古場 | うえのたいほう おけいこば | 
| 51 | |
| 両度に郡の御代官 | りょうどにぐんの おだいかん | 
| 御紋幕打ち御上覧 | ごもんまくうち ごじょうらん | 
| 陣笠揃ふて西目峠 | じんがさそろうて にしめたお | 
| 少し上は居場ノ原 | すこしくうえは いばのはら | 
| 52 | |
| 亀山麓川尻に | かめやまふもと かわじりに | 
| 羽宿・目代の継場あり | はじゅくめだいの つぎばあり | 
| 人馬出浮の役所あり | じんばしゅつふの やくしょあり | 
| 前の地名は鍛冶屋の田 | まえのちめいは かじやのた | 
| 53 | |
| 森地の田地高面所 | もりちのでんち たかめんじょ | 
| 川の向こうは畑の村 | かわのむこうは はたのむら | 
| 山口往還通り筋 | やまぐちおうかん とおりすじ | 
| 日々に通路の諸商人 | ひびにつうろの あきんどら | 
| 54 | |
| 奥は深山・滑谷 | おくはふかやま なめらたに | 
| 杉や檜の名木が | すぎやひのきの めいぼくが | 
| 浴々谷に積りなし | えきえきたにに つもりなし | 
| これぞ御上の御立山 | これぞおかみの おたてやま | 
| 55 | |
| 猥りの採用御制道 | みだりのさいよう ごせいとう | 
| 御山方の御役人 | おんやまかたの おやくにん | 
| 木印を入れて御採用 | きいんをいれて ごさいよう | 
| 御山の立札恐ろしい | みやまのたてふだ おそろしい | 
| 56 | |
| 東は生雲の大境 | ひがしはいくもの おおざかい | 
| 頬白峠と申すなり | つらじろとうげと もうすなり | 
| 坂の麓は足谷の | さかのふもとは あしだにの | 
| 谷水深き深山口 | たにみずふかき みやまぐち | 
| 57 | |
| 東の後に村があり | ひがしのあとに むらがあり | 
| 雨風日除けの笠ケ迫 | あめかぜひよけの ささがさこ | 
| 野山も広き下谷に | のやまもひろき しもたにに | 
| 笹ケ迫の修南山は | ささがさこの すなやまは | 
| 58 | |
| 山芋つづら沢山な | やまいもつづら たくさんな | 
| 秋は松茸・なば・しめじ | あきはまつたけ なばしめじ | 
| 水の流れの両平は | みずのながれの りょうひらは | 
| 滑段田が西東 | なめらだんだが にしひがし | 
| 59 | |
| 肉食好む鳶の巣の | にくしょくこのむ とびのすの | 
| 坂の麓は神田川 | さかのふもとは かんだがわ | 
| 東向ふの谷深き | ひがしむこうの たにふかき | 
| 堅ひ浮世の石ケ浜 | かたいうきよの いしがはま | 
| 60 | |
| 秋は栗・柿沢山な | あきはくりかき たくさんな | 
| 春は浴々蕗のあり | はるはえきえき ふきのあり | 
| りふぼふとりや蕨摘み | りうぼうとりや わらびつみ | 
| 郷家へ売りて銭儲け | ごうかへうりて ぜにもうけ | 
| 61 | |
| 奥山・石組・陰地なり | おくやまいしぐみ かげちなり | 
| 下は森本・中蔵の | しもはもりもと なかくらの | 
| 当尾の山の庵の跡 | とうおのやまの あんのあと | 
| 解きたる跡も虎の尾の | ときたるあとも とらのおの | 
| 62 | |
| 春は美々し花風吹き | はるはうつくし はなふぶき | 
| 廉名ケ坂の麓には | かどながさかの ふもとには | 
| 安光谷の水流れ | やすみつだにの みずながれ | 
| 末永村の境内は | すえながむらの けいだいは | 
| 63 | |
| 中に古木の厳嶋 | なかにこぼくの いつくしま | 
| 大明神様ましまする | だいみょうじんさま ましまする | 
| 安芸の宮島写しにて | あきのみやじま うつしにて | 
| 羽がいの白い五烏が | うがいのしろい ごからすが | 
| 64 | |
| 神の御使い恵比寿さま | かみのみつかい えびすさま | 
| 御山詣ふでの鈴の音 | みやこもうでの すずのおと | 
| 拍手たへぬ五社参り | かしわでたえぬ ごしゃまいり | 
| 逸も霜月初の申 | はやもしもつき はつのさる | 
| 65 | |
| 宮居に積もる冬の月 | みやいにつもる ふゆのつき | 
| 末永々と往く年も | すえながながと ゆくとしも | 
| 豊作続く高佐郷 | ほうさくつづく たかさごう | 
| 五穀繁昌地名の記 | ごこくはんじょう ちめいのき | 
| 終 | |
| 御国役定の御礼場 | くにやくさだめの おんふだば | 
| 祐の久保と申すなり | こそのくぼとは もうすなり | 
| 当職様の御名あり | とうしょくさまの ぎょめいあり | 
| *上記3行は組み込まれていません。 | |
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