2021/09/30

「地名」とは何なのか

「地名」とは何なのか

『広辞苑』をひもといてみますと、そこにあるのは「土地の名称。」という極めて簡潔な説明のみです。

「地名」とうことばは、「土地」の「地」と「名称」の「名」を組み合わせたことばのようですが、そこから一歩踏み込んで「土地」とは何かを考察するとき、『広辞苑』の説明はほとんど役にたちません。

しかし、平凡社『世界大百科事典』の「地名」の項目には、かなり詳しい説明が出てきます。

それによると、「地名」にはいくつかのパターンがありそうです。

【地形名】
「山川草木などの地形によってつけられた・・・地形名」が「固定して固有の地名となる」場合

【利用地名】・【自然地名】
「土地の利用によって命名された」場合

【占有地名】・【歴史地名】
「土地利用が進んで特定の集団または個人の占有を表現」している場合

【分割地名】
「占有が強化され土地が細分されるに及んで、従来の地名を上下、方位、大小、新古の区別によって分割命名」した場合

【新しい地名】
「必要に応じてあたらしくつけられる利用地名」の場合

この項を執筆した大藤時彦によると、「日本は地名の多い国として知られている」そうですが、その地名、歴史的にみると、命名と廃棄が繰り返されたようです。命名の根拠となった上記理由が、いつのまにか忘れられて、「意味がわからなくなってしまった」場合が少なくないようです。大藤によると、「地名」の意味がわからなくなるのは、命名の「理由が不明に帰するためである」といいます。たとえば、「地名が最初につけられた地域より拡大利用」されたり、「土地の姿が変わったりしてしまった」ことがその原因としたあげられます。

最近全国でおこなわれている地方行政の統廃合も、「地名」の変化に大きな影響をもたらします。大藤は、「町村合併にもとづく新地名など」は、統廃合が繰り返されることで、「精確に記録しておかないと後にわからなくなる・・・」、といいます。

大藤は、「合併と反対に人口が増加したり新しく開墾したりして分村する場合がある。そのさい全然新しい地名をつけることもあるが村名に上・下や東・西・南・北をつけて区別するのが普通である。」といいます。分村の場合の区別の指標は、「上・下」、「東・西・南・北」の他に、「内・外」、「浜・山」、「岡・浜」、「畝・谷」、「山・原」、「谷・渡」、「里・野」、「町・在」、「峠・谷」があります。大藤は、これらの地名は「町村合併」によって消えていっているといいます。

大藤は、その概略的説明のあと、【地形名】・【利用地名】・【自然地名】・【占有地名】・【歴史地名】について詳述していますが、その際言及されている【信仰に関した地名】を含めて、それらの地名のつけ方は、山口県の被差別部落の地名にも適用できるものが多々含まれています。

「地名」に関する一般的研究の成果は、被差別部落の「地名」の由来と、その持っている意味を明らかにするために流用・転用することが可能であると思われます。

(執筆継続中・・・)

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