2021/10/01

水平社宣言(原文)

水平社宣言(原文)


宣言

全國に散在する我が特殊部落民よ團結せよ。

長い間虐められて來た兄弟よ。

過去半世紀間に種々なる方法と、多くの人々によってなされた我等の爲の運動が、何等の有難い効果を齎らさなかった事實は、夫等のすべてが我々によって、又他の人々によって毎に人間を冒涜されてゐた罰であったのだ。そしてこれ等の人間を勦るかの如き運動は、かえって多くの兄弟を堕落させた事を想へば、此際我等の中より人間を尊敬する事によって自ら解放せんとする者の集團運動を起せるは、寧ろ必然である。

兄弟よ。

我々の祖先は自由、平等の渇迎者であり、實行者であった。陋劣なる階級政策の犠牲者であり、男らしき産業的殉教者であったのだ。ケモノの皮を剥ぐ報酬として、生々しき人間の皮を剥ぎ取られ、ケモノの心臓を裂く代價として、暖かい人間の心臓を引裂かれ、そこへクダラナイ嘲笑の唾まで吐きかけられた呪はれの夜の惡夢のうちにも、なほ誇り得る人間の血は、涸れずにあった。そうだ、そうして我々は、この血を享けて人間が神にかわらうとする時代にあうたのだ。犠牲者がその烙印を投げ返す時が來たのだ。殉教者が、その荊冠を祝福される時が來たのだ。

我々がエタである事を誇り得る時が來たのだ。

我々は、かならず卑屈なる言葉と怯懦なる行爲によって、祖先を辱しめ、人間を冒涜してはならなぬ。そうして人の世の冷たさが、何んなに冷たいか、人間を勦る事が何であるかをよく知ってゐる吾々は、心から人生の熱と光を願求禮讃するものである。

水平社は、かくして生れた。

人の世に熱あれ、人間に光りあれ。

大正十一年三月三日 全國水平社


決議

一、吾々に對し穢多及び特種部落民等の言行によつて侮辱の意志を表示したる時は徹底的糺彈を為す

一、全國水平社本部に於て我等團結の統一を圖る為め月刊雑誌『水平』を発行す。

一、部落民の絶對多数を門信徒とする東西兩本願寺が此際我々の運動に對して抱藏する赤裸々なる意見を聴取し其の回答により機宜の行動をとること

右決議す

大正十一年三月三日 全國水平社創立大會


『部落学序説』第5章・水平社宣言批判で使用する文献としての「水平社宣言」とその「決議」は、「決議」の中にうたわれている月刊雑誌『水平』第1巻第1号、27~28頁に収録されている上記「水平社宣言」とその「決議」を使用します。

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