2021/10/03

黒川の「触書」の解釈方法

黒川の「触書」の解釈方法(旧:黒川の「触書」解釈批判1)


まず、三重県「平民籍編入についての触書」の全文を紹介しましょう。

「今般穢多平民同様に仰せ出でられ候につきては、家内煤払いいたし、糞灰不浄の品取り捨て、これまでの火を打ち消し、川筋等へ男女人別子共に至るまで罷り越し垢離を取り身を清め、氏神へ参詣、神主相頼み神楽を上げ氏子に相成り、神前にて篝火を焚き右火を火縄に付け帰り、銘々火を改め申すべきこと
1.これまで風体改革平民同様心掛くべき事
2. 革商売の義は銘々都合次第たるべきこと
3. かねて仰せ出候御法度向いよいよ堅く相守り他所はもちろん郷市において無礼不作法致さぬよう、なお店先等にて不行跡の振る舞いこれ無きよう万端相慎み候よう心得申すべき事。
右の通り来月三日村役人ども立会い前条取扱い申すべく候事
但し氏神に相成るべき神職どもへもこの旨相達し申すべき事
辛未九月」

この三重県「平民籍編入についての触書」が、黒川みどり著『地域史の中の部落問題 近代三重の場合』においてどのように取りあげられているか、比較してみましょう。

文字通りの引用・・・・・朱色
要約して引用・・・・・緑色
引用されなかった箇所・・・・・青色

「今般穢多平民同様に仰せ出でられ候につきては、家内煤払いいたし、糞灰不浄の品取り捨て、これまでの火を打ち消し、川筋等へ男女人別子共に至るまで罷り越し垢離を取り身を清め、氏神へ参詣、神主相頼み神楽を上げ氏子に相成り、神前にて篝火を焚き右火を火縄に付け帰り、銘々火を改め申すべきこと
1.これまで風体改革平民同様心掛くべき事
2. 革商売の儀は銘々都合次第たるべきこと
3. かねて仰せ出候御法度向いよいよ堅く相守り他所はもちろん郷市において無礼不作法致さぬよう、なお店先等にて不行跡の振る舞いこれ無きよう万端相慎み候よう心得申すべき事
右の通り来月三日村役人ども立会い前条取扱い申すべく候事
但し氏神に相成るべき神職どもへもこの旨相達し申すべき事
辛未九月」

黒川は、『地域史の中の部落問題 近代三重の場合』の中で、三重県「平民籍編入についての触書」を取りあげる際、赤色の部分と緑色の部分のみをとりあげ、青色の部分は、『地域史の中の部落問題』全編を通じてほとんどとりあげません。

黒川にとって、青色の部分はどのような意味合いがあるのでしょうか。

歴史学論文の作法を知らない無学歴・無資格の筆者が推測するに、青色の部分は(1)資料として価値がない場合と、(2)資料として価値がある場合が考えられます。

資料としての価値がない場合もある場合も、黒川が青色の部分を意図的に排除する、その理由は何なのでしょうか。その理由を明らかにするのは、歴史学者としての当然の責務であると思うのですが、黒川は青色の部分をすっかり削ぎ落としてしまいます。

黒川の、『地域史の中の部落問題』を通して青色の部分の意味を把握できそうにありませんので、『部落学序説』第4章及び部落学序説(別稿)であきらきにしてきたことをてがかりに、黒川がとりあげなかった、三重県「平民籍編入についての触書」の青色の部分を考察するとともに、日本の歴史学に内在する差別思想である「賎民史観」を無比判的に受け入れている研究者・教育者の学的限界を明らかにしていきましょう。 

0 件のコメント:

コメントを投稿

『部落学序説』関連ブログ群を再掲・・・

Nothing is unclean in itself, but it is unclean for anyone who thinks it unclean.(NSRV)  それ自身穢れているものは何もない。穢れていると思っている人にとってだけ穢れている(英訳聖書)。 200...